都立高校入試の社会:出題傾向と対策
都立高校入試の共通問題は出題形式が安定しており、過去問でどのような内容が、どのような形式で出題されているかを把握することは極めて重要です。
今回の記事では都立入試の社会の出題形式を一通り説明した上で、その入試形式において特徴的なものをおさえておきたいと思います。
都立入試の社会は6つの大問から構成されます。
大問1 地理 + 歴史 + 公民
大問2 地理(世界地理)
大問3 地理(日本地理)
大問4 歴史 次回予定
大問5 公民 次回予定
大問6 地理歴史公民(融合) 次回予定
地理・歴史・公民の割合は点数比にすると40:30:30 でやや地理の比重が重くなっています。また、歴史においても地図上の位置を問うものが増えており、地理の重要性は歴史公民とくらべると点数的に重要となっています。
大問1
1⃣(1)地理(地形図と写真、スケッチなど) 問1は地形図とそれに関連した資料の読み取りが出題されることが多いです。
地形図の読み取りだけでなく、様々な資料、説明文などを総合して解く問題になっています。
(2)歴史(説明文→用語、地図上の位置)
問2は歴史の用語やその地図上の位置を選択する問題です。
令和4年では
「鑑真によって伝えられた戒律を重んじる律宗の中心となる寺院は、中央に朱雀大路が通り、碁盤の目状に整備された都に建立された。金堂や講堂などが立ち並び、鑑真和上座像が御影堂に収められており、1998年に世界遺産に登録された。」との文から考えて
答えの唐招提寺(奈良県)の場所を地図上から選ぶことになります。
唐招提寺を特定する必要はありませんが、奈良時代であること、平城京であることさえわかれば解けるようになっています。都立の特徴で、説明文のヒントを一つでも拾うことができれば特定できるような仕組みになっています。
世界遺産が話題になることも多く、歴史上の出来事の位置に関しては地図で整理しておくとよいでしょう。新しく世界遺産に登録された佐渡島(新潟県)とその金山に関しては要注意です。日本の世界遺産の学習セットについてもリンクを貼っておきます。
(3)公民(説明文→用語)
問3は公民の紛らわしい用語を選択する問題です。
マークシート形式が導入されてからは説明文から用語を推測して、選択する形式になっています。傾向として知っておくべきことは、同じカテゴリーの紛らわしい用語から出題されるということです。以下、その出題された問題の選択肢です。これらを明確に区別できますか?
選挙の四原則(平等選挙、直接選挙、秘密選挙、普通選挙)
国会(常会、臨時会、特別会、緊急集会)
裁判所(簡易裁判所、家庭裁判所、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所)
基本的人権(平等権、自由権、社会権、請願権、参政権)
労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)
紛らわしい四択を作る出題者の気持ちになれば、必然的にココは出したい!と思う場所が見つかるはずです。
マークシートの基本は2択4択です。紛らしい2択、紛らわしい4択の作れると思ったら絶対にそれを区別して覚えましょう。紛らわしい選択肢を区別して覚える勉強こそが極めて重要です。
自分塾では学習アプリ、暗記アプリとしてQuizletを活用しています。通塾生はクラスに所属して単語カードだけでなく、テスト機能を利用できるのですが、公民の一問一答の学習セットでは紛らわしい選択肢を設定して練習してもらっています。
大問2
世界地理
大問2では世界地理の問題が出題されます。覚えてほしい知識は主要項目はまず以下の5つです。
①気候:都市の気温や降水量について問われます。雨温図の読み取りは必須技能です。
②産業:各国の主要産業、輸出品について問われます。国や地域の特徴的な産業
③国土:山脈、河川、海岸、国境線など特徴的なものをおさえましょう。
④宗教:代表的な宗教の分布を地図帳の特集ページで覚えましょう。
⑤言語:主要な言語も覚えておきましょう。
まずは赤道の位置を”正確に”覚えましょう。
シンガポール、アマゾン川の河口などの特徴的な場所を基準に正確な線を引けるようにしましょう。北半球、南半球、赤道からの距離が即座に視覚化されてほとんどの雨温図の問題は解けるでしょう。
つぎに、地図帳の巻末や冒頭の特集ページを読みましょう。
言語別、宗教別、主食別、平均所得別などそれぞれの切り口で世界の分布をカラフルに視覚化されているページがあるはずです。見当たらないときはインターネットを利用してすぐに検索する癖をつけておくのがよいでしょう。
統計などは人口、第一次産業、第二次産業、第三次産業の割合、識字率、主な輸出品などが
参考になるサイトのリンクを貼っておきます。
世界の言語分布(代表言語13の世界通用地図(PDF)慶應義塾大学外国語教育研究センター)
また、資料の読み取りには「計算問題」があります。
特に割合の増減と数値の増減などは計算することで選択肢を絞れるようになっています。
令和6年の問題では「2001年と比べて2019年では、日本の輸入額は2倍に届いてはいないが増加し、輸出額は3倍以上となっている。~」など具体的に輸入額と輸出額の増加割合を計算することで正答に近づけるようになっています。計算方法が分からない場合は、先生や友人に聞いてみましょう。方法さえ分かれば、あとは計算して選択肢をしぼるだけです。
さらに、近年は特定した国の名前を選択させる問題も出題されています。
統計や文章から国が分かっても、国の場所が分からなければ正答できないものも増えています。
アジア圏とヨーロッパ圏に関しては、国名と場所を正確に一致させて覚えておきましょう。

大問3 日本地理
日本地理では各都道府県を様々な資料から特定していく問題が出題されます。
それぞれの都道府県の
①気候:都道府県の気候。山脈と季節風の関係、気候と農業の関係が良く問われます。
②産業:都道府県の産業について問われます。工業地域、工業地帯はもちろん、農業漁業などの基本情報をおさえておきましょう。
③自然環境:山脈、河川、海岸、など自然環境での特徴的なものをおさえましょう。
特に山脈は東西南北などをしっかり押さえるだけでほとんどの問題が解けます。
④世界遺産:各都道府県の世界遺産はかならず覚えましょう。固有名詞が出なくとも、説明文でそれと気づけるようにしましょう。
まずは、白地図の状態で、日本列島の山脈をしっかり書けるようにしましょう。
東京都では「南東の県境付近にある山脈、」「北側の3000m級の山々が連なる山脈は南北方向に走っており、…」など、山脈の場所が分かるだけで一発で特定できる問題が出題されます。最優先は山脈です。山脈の場所さえ分かれば、川の場所も分かり、平野部都市部も特定できるでしょう。
時折、鉄道距離、国道距離、海岸線の距離などが出題されることがありますが、これは単純に地図を見れば明らかでしょう。覚える必要はありません。
つぎに覚えるのは工業と農業です。工業に関しては工業地域、工業地帯の大まかな上位生産品の割合をしっかり覚えましょう。出題は都道府県、空港、海港など切り口が違うものの基本的には各地域の工業割合を覚えるだけで大丈夫です。都立は多くの指標のどれか一つが読み取れれば解けるような親切なつくりのテストです。資料の使い道や解釈が分からない場合は必ず解説を読んだり、先生に聞くなどしてどういう読み取りをするのかをはっきりさせてください。
問3の記述問題は基本的に多くの問題が過去から現在にかけての土地利用の変化を問うものが多いです。多くは交通網の発達による土地利用の変化を聞くものが多いので、地形図では道路や鉄道に着目しつつ、変化している地形を読み取っていきましょう。

大問4以降は別記事に分けて書こうかと思います。
完成次第こちらの記事にもリンクを載せておきます。
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