前回の記事の続き(都立入試 社会 傾向と対策②)
都立入試の社会は6つの大問から構成されます。
大問1 地理 + 歴史 + 公民
大問2 地理(世界地理)
大問3 地理(日本地理)
大問4 歴史
大問5 公民
大問6 地理歴史公民(融合)
今回は後半の大問4から6にかけての都立入試社会の傾向と対策を説明していきます。
大問4 歴史
都立入試での歴史でもっとも重要なことは
時代ごとの特徴をつかむことです。
文化史、経済史、外交史など時代を特定のテーマで時系列に並べる問題が出題されます。
特に重要なのは、時代ごとの特徴を表すキーワードと、時代間の違いを意識することです。
まずは大まかな年表と時代ごとの文化、政治、経済、外交、税制、土地制度などを覚えましょう。そして、近い年代で紛らわしいものを区別して覚えましょう。
簡単なものでいうと、
法隆寺(飛鳥)→国分寺国分尼寺(奈良)→延暦寺(平安前期)→平等院鳳凰堂(平安後期)のような仏教寺院の区別などが典型的なものになります。
江戸時代などは、初代家康、三代家光、五代家綱、と四大改革(吉宗、田沼、松平、水野)を区別できるくらいの解像度で覚えましょう。
明治以降は、
明治初期、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、大正時代、昭和恐慌、戦時中などおよそ10年刻みくらいの間隔で区分をつくるとよいでしょう。
ちなみに2025年は、
1925年普通選挙法、治安維持法、ラジオ放送の開始(大正デモクラシーと大衆文化)
からちょうど100年の年になります。非常に問題が作りやすいテーマだと思うので是非意識して年代も覚えておきましょう。年代に関しては作成した語呂合わせの学習セットを用意してあります。塾生も重要なものは丸暗記してもらっています。よければご活用ください。
大問5 公民
公民で覚えるべき要素は大きく分けて三つです。
一つ目は、基本的人権(自由権、社会権、平等権)それを支える権利(請願権、参政権)
を覚えることです。基本的な教科書や参考書には表や図に分かりやすく整理してまとめられているはずです。これらを整理して覚え、「条文」を見て、どの権利を指しているのかを識別できるようにすることが重要となります。以下は令和五年度の出題例です。

過去平成22年から15年間の出題の下の表にまとめてあります。

二つ目に注意して覚えることは、紛らわしい用語の識別です。
例としては、「憲法、法律、政令、省令、条例」「社会保険・公的扶助・公衆衛生・社会資本整備」「国庫支出金・地方交付税交付金」「法人税・所得税・消費税」「参議院と衆議院」「大統領と総理大臣」など似た内容で明確に違いを覚える必要があるものです。税金ではあれば、直接税か間接税か、国税か地方税かの区別もよく狙われています。なんとなく分かるけれども区別できないということがないように、何が違うのかを意識しましょう。
三つめは、現代史です。
消費者行政や公害対策、男女平等施策、消費税など戦後の歴史の中で少しずつ変化して法整備されてきたものの流れを抑えることです。基本的な歴史の流れと各種法律の順番を整理して覚えることが重要となります。
男女雇用機会均等法→男女共同参画社会基本法→女性活躍推進法
消費者保護法→製造物責任法(PL法)→消費者基本法→消費者庁設立
消費税3%(89年)→消費税5%(97年)→消費税8%(2014年)→消費税10%(19年)
消費税などは語呂合わせで年代もまとめて覚えてもらっています。
最低限の現代史の流れが把握できていれば、資料から読み取れる情報と合わせて解けるようにはなっていますが消費税に関しては年代を覚えておくと間違いなく役立つと思います。
大問6 融合問題
最後の大問6は地理、歴史、公民それぞれから出題されますが、融合した問題にもなっています。
一つは国の歴史と地理を関連させた問題です。
イギリスピューリタン革命、名誉革命、アメリカ独立戦争、フランス革命、ドイツビスマルクによる近代化など世界の歴史を関連させた問題が出題されます。
大航海時代の
主要な海外の歴史についてはおおまかな時代順を覚えておきましょう。
また、近年、完全解答問題が極めて多くなっており、地図上でそれぞれの国の場所を答えることも必要になってきています。
二つ目は資料読み取り型の現代史(歴史公民融合)問題です。
知識があれば即答できるような問題ですが、逆に言えば知識がほとんどなくともグラフや表の読み取りと計算さえしっかりできれば答えられるような問題が出題されます。
下図の問題は令和3年度の出題例です。資料Ⅱの文の黄色部分と資料Ⅰのグラフをよく読めば、経済成長率が前半上昇傾向、後半は一時的に減少。法人企業の営業利益が後半増加し続けた。という内容で知識が無くとも「正答:イ」にたどりつける設定になっています。
もちろん、緑の部分で、プラザ合意1985からのバブル景気-91 と知識があれば即答できるので、現代史の基本はおさえておきましょう。

都立の傾向としては大きく変更はないものの、社会に関しては完全解答で正解になる問題が増えてきています。つまり、単純な4択ではなく、4*3*2*1=24択そのため、10年前よりも点数は取りにくくなってきているかもしれません。完答で点になるマーク模試という性質上、四択という運に任せた得点は期待できません。しっかり国や時代を特定し、出来事の順番を理解し、用語の違いを区別することが重要です。そして資料から割合や増減をしっかり計算し、選択肢をしぼっていく問題を解くことが都立入試の重要なポイントとなるでしょう。また地図上の位置を問う問題もかなり増えてきており、4~7問ほどの比重となっています。

社会はすべて覚えようと思うとせず、要点を絞って覚えることが重要です。
特に出題形式が安定している試験であればなおさらです。
どういうことをどの程度の精度で覚えればいいのか、しっかり意識して学習しましょう。
なんとなく読んだり、なんとなく問題を解くことは非効率です。
インプットアウトプットの仕方を工夫して、出題形式に合わせた演習をしてみてください。
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